小林製薬の“華麗なる一族”、自主回収の“常習犯”に!配当金25億、馬主32頭の実態とは?



創業家資産は1600億円! 年3億の役員報酬も…小林製薬“猛毒会長”の正体とは「『アカン』と言ったら全部やり直し」《辞任発表》〉から続く

大手製薬会社幹部は、小林製薬を「広告宣伝が巧いだけ」と...

「資金力が増した2000年代以降は、積極的にM&Aを仕掛ける企業になった。笹岡薬品の『命の母』、桐灰化学の『桐灰カイロ』など長年の販売実績がある商品を、M&Aで自社ブランド化していった」(前出・経済誌記者)

 ライバルの大手製薬会社幹部は同社をこう評する。

「会社の名前は“製薬”と謳い業種は医薬品に分類されています。しかし処方箋が必要な薬は作っていない。主力は市販薬と生活雑貨で、ゼロから新しい薬を作る能力はなく、広告宣伝が巧いだけの会社です。例えば内臓脂肪を燃やすことを売りにしている『ナイシトール』は、防風通聖散という昔からの漢方薬に新しい名前を付けて売っているだけ」

一族が持つ株は約1600億円、毎年25億円の配当金

 現在の従業員数はグループ全体で3500人を超えている。前出の経済誌記者が語る。

「04年に弟の豊氏(故人)に社長を譲り、その後13年に長男、章浩氏が社長に。しかし76年から、48年間代表権は手放さず、代表取締役会長として君臨し続けているのが一雅氏なのです」

 小林製薬は、00年8月に東証一部(現・プライム)に上場。昨年末の有価証券報告書によると33%(2476万株)を一族が保有しており、筆頭株主は章浩氏で12%、第3位に一雅氏が代表を務める小林財団が入っている。一族の持つ株の時価総額は、紅麹問題が社内で議論された2月5日の時点で、約1600億円ほど。昨年の年間配当金は101円のため、一族で約25億円を手にしていることになる。

「さらに同社は高額な役員報酬で知られ、一雅氏は1年間で3億2300万円、章浩氏は1億100万円を得ている」(同前)

 “華麗なる一族”は不動産も多数所有している。中でも、一雅氏は「消臭元」ブランドが芳香剤で初めて年間売上100億円を突破した04年、兵庫県芦屋市の超高級住宅街・六麓荘(ろくろくそう)の850坪の土地に豪邸を建設した。地元不動産業者によると「人気のエリアで、外国人の購入も増えている。坪単価は200万円することもあり、土地だけで17億円は下らない」という。

 一雅氏と息子の章浩氏は確認できただけで都内や関西近郊に計6つの高級マンションも所有している。

「いずれも一等地にありますが、一雅会長名義の都内の物件は、85平米で1億8000万円以上の値が付く」(小林製薬関係者)

 一雅氏は都心のマンションの他に、大阪市内のタワマンを2部屋所有しており、推定価格は2部屋合計で2億4000万円。

 一方の章浩氏は大阪市内にタワマン一室(105平米)を所有しており、こちらの推定価格は1億円。また、神戸市内のタワマンは、2部屋所有し合計で2億円ほどの価格とみられている。

 不動産以外にも一雅氏は、大きな買い物をしている。競馬ライターが話す。

「アカン」と言ったら全部やり直し...会長は競走馬オーナー、社長の趣味は生け花

競走馬です。1億円を超える馬も購入しているが、成績はイマイチ。名前の『カズ』を冠して『ジャンカズマ』などと付けています」

 現在、32頭の現役馬を所有するが、重賞勝利は1頭のみと、大ヒットは生み出せていないようだ。

 “家長”である一雅氏を中心に、株、不動産、馬など実に1600億円を優に越す資産を所有している小林一族。別の元社員は、一雅氏の章浩氏への影響力をこう話す。

「紅麹問題で記者会見に出てきた章浩さんは金持ちケンカせずを地で行くボンボン。特に年上のベテラン社員には腰が低い。趣味はトライアスロンで、生け花をしていたこともある。その性格のせいなのか、いつまでたっても一雅さんの“独裁”が続いているのです」

 社員にとっては会長となった一雅氏が院政を敷いていることは自明だった。

「一雅さんと章浩さんがそれぞれ子会社も含めて社内の全部署をまわって、現場の話を聞くワークショップを行っています。また、05年からは一雅さんが講師となり『K営塾』と称した幹部候補生育成も行っている」(同前)

 毎年、選抜された12名の社員が、直接一雅氏の薫陶を受ける。その中から、執行役員などの重責を担う社員が生まれるのだという。

 新商品を製品化するのにも、一雅氏の判断が重要だ。

「頭を絞って新製品の名前を考え、パッケージまで出来上がっていたのに、一雅さんが一言『アカン』と言ったら全部やり直しになったこともあった」(同前)

 一方で、一雅氏は22年に出した自著『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』でおりもの専用シート「サラサーティ」(88年)を発売した時のエピソードを紹介している。当時、「おりもの」という言葉は使わない方が良いという女性社員の猛反発を受けたという。しかし、信念を貫いたことで、ヒット商品となったと自画自賛している。

「昔の一雅さんは新たな投資には慎重だった。ただ、CMで成功してしまい...」

信念を持って生んだはずの商品が大問題を引き起こしたことは、一度や二度ではない。過去の新聞記事などを調査すると、確認できただけでも1993年以降、実に31年間で17回も製品の回収を行っている。

「11年には、『天使の耳かき』が折れて一部が耳に残る事故が相次ぎ、220万個を回収している。18年に『のどぬーるスプレーキッズC』の有効ヨウ素量が承認規格を上回る可能性があることが分かり回収。昨年3月には『ケシミンクリームEXαb』も有効成分に問題があり回収。同9月にも『クレンジル』『アロエ製薬便秘錠』などを製造及び試験が適正に行われていなかったとして回収しています」(同前)

 まるで自主回収の“常習犯”のようにも見えるがある元社員はこう弁明する。

「昔はウチの会社はすごく真面目だった。93年、『こんがり魚焼き石』という商品はたった2件、購入者から苦情があっただけで回収し、返金対応までしています」

 数々の回収の裏には、同社の開発力に疑問を抱かせる“事件”もあった。

「医療機器に対する知識がなかった」と失敗を認め…

 一雅氏本人も自著で「私に医療機器に対する知識がなかった」と失敗を認めた医療機器分野への参入だ。

「11年、子会社の小林メディカルが大腿骨の骨折の治療に使うチタン合金のインプラントの疲労試験のデータを改竄。厚労省に薬事法違反で行政処分(業務停止処分)を科されている」(前出・社会部記者)

 処分後、12年に小林製薬は、小林メディカルを三菱商事に売却。小林製薬で医療機器に携わったことのある元社員が話す。

「医療機器分野は、規制が厳しくパッケージの印刷ミス1つでもすぐに厚労省に報告し、卸先の医療機関に連絡を入れるなど細かにマニュアル化されていた。(売却後は)そうした厳しい管理を実行するような人材がいなくなってしまったのでは」

 前出の元社員もこう話す。

「昔の一雅さんは新たな投資には慎重だった。ただ、CMで成功してしまい、身の丈をわきまえないで、今回のサプリなどに手を広げ過ぎたように思える」

 インサイダー疑惑や一雅氏の経営方針などについて質問状を送ったところ、小林製薬から回答があった。

「弊社の紅麹関連製品について、関係の皆様に多大なご心痛、ご不安をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。現在、弊社は紅麹関連製品の回収及び体調不良を感じておられるお客様のお問い合わせへの対応等に全力を上げて取り組んでおり、回答を差し控えさせていただきます」

 “あったらいいなをカタチにする”を標榜する小林製薬が起こしたあってはならない事件。真相究明が待たれる。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年4月11日号)

厚労省による工場の調査 ©時事通信


(出典 news.nicovideo.jp)