【ルックバック】クリエイターの日常を描くアニメが人気爆発中!話題の作品を紹介
何かを作ることは楽しい。でも、創作を人生の糧にできる人は一握り。その上、自分の好きなものを作って生きていける人はさらに限られます。だからこそ、クリエイターを描く物語には濃密なドラマがあります。
【大きい画像を見る】『ルックバック』新規場面カット(C)藤本タツキ/集英社(C)2024「ルックバック」製作委員会
このところ、何かを表現したい人々を描いたアニメ作品が多く登場しています。マンガ家を目指す2人の少女を描いた『ルックバック』、ミュージックビデオ(MV)作りに情熱を燃やす男子高校生と音楽の道を諦めた女性を描く『数分間のエールを』、テレビアニメでも音楽活動を中心にした『ガールズバンドクライ』や『夜のクラゲは泳げない』などの作品が同時期に登場しています。
これらの作品には創作の喜びと苦しみが混じりあっており、自らも創作者である作り手たちの実感も強くこもったものが多く熱量の高い作品になっているのです。
■大人と子どもの視点から創作を描く『数分間のエールを』
『数分間のエールを』は、ヨルシカのMVなどで注目された映像制作チーム「Hurray!」が初の長編アニメに挑んだ作品です。ぽぷりか、おはじき、まごつきの3人で構成されるチームと、『響け!ユーフォニアム』などの人気作の脚本を手掛ける花田十輝が組んで、モノづくりに対する瑞々しい感覚が全編に宿った作品となっています。
主人公の朝屋彼方は、MV作りに熱中している男子高校生。ある日、彼は雨の中でストリートライブをする女性に出会い、MVを作りたいと思うようになります。しかし、その女性は翌日、彼方の学校に赴任してくる教師・織重夕でした。織重先生は、すでに音楽の道を諦めており、彼方のMVを作らせてほしいという願いに応えられないと言います。自分の情熱に一直線な少年と、現実の壁にぶつかり夢破れた大人。2つの目線でモノづくりの理想と現実を描いた作品です。
夢に向かって邁進する彼方の姿を見ると、「自分も何かを始めたい」と背中を押されるような気持ちになるでしょう。一方で織江先生には、かつて追いかけていた夢を諦めた人は共感を覚えるのではないかと思います。モノづくりを諦めない情熱を力強く描いた作品ではありますが、同時に諦めた人にも温かい眼差しを持っており、再び夢を追いかけるための力をくれる内容になっているのが印象的です。
本作は、MVを数多く手がけてきたHurray!の3人が、MV作りを夢見る少年を描くという点で、作り手たちの実感がこもった作品だと思われます。MV作りはパソコンに向かい続ける地味な作業ですが、そこには並々ならぬ葛藤と努力があり、それをアニメーションならではのダイナミックな表現で描いています。広大な空間に彼方が魔法のように操作コマンドを出し、キャラクターや背景などを描き込んでいくシーンは、モノづくりのワクワク感が充満しています。
また、本作は全編Blenderで制作したフルCGアニメで、従来の日本アニメとは一線を画すビジュアルスタイルを指向しており、新たな息吹を感じさせる作品でもあります。
■マンガ家を描くマンガをアニメ化した『ルックバック』
『ルックバック』は藤本タツキの同名マンガをアニメ化した作品。マンガづくりに情熱を傾ける2人の少女を描いた作品で、原作はマンガ家についてのマンガということで、こちらも『数分間のエールを』同様に、作り手自身の実感が強くこもっていると言えるでしょう。
小学校4年生の藤野は、学校新聞に4コママンガを投稿しており、それが同級生や先生たちにも好評でした。自分にはマンガの才能があると信じて疑わない藤野でしたが、ある日、不登校の同級生・京本の緻密な画力の作品が掲載されると、負けるのが悔しい藤野は必死の努力で画力を上げていきます。しかし、京本の画力には追い付けず、6年生になると藤野は諦めてマンガを描くのを辞めてしまいます。しかし、実は京本が藤野のマンガの大ファンだったことを知ると藤野は再びマンガを描き始め、中学からは2人でペンネーム「藤野キョウ」を名乗り、マンガ家を目指すことになるのです。
子ども時代の全能感をへし折られてもなお、努力し続け、へし折った相手が一番自分のことを認めてくれていたことを知ると、再び情熱を取り戻すという展開が印象的で、創作者同士が互いに刺激し合うものだというのがよくわかる内容です。
また、2人がコンビを組む展開についても、京本は画力は高いけどマンガの展開やコマ割りが上手いわけじゃない、藤野は画力で負けてはいるものの、センスのある物語を作れるし、人物も描けるよう努力しているという点で、互いの弱点を補い合う存在として描かれています。絵の上手さとマンガの上手さはそれぞれ異なるという点が意識されており、それをアニメづくりがものすごく上手い押山清高監督によって映像化されたことで、多層的に「絵を描くこと」に対して想いを馳せる作品になっています。
『数分間のエールを』と『ルックバック』に共通しているのは、2人のクリエイターが互いに影響し合うという点を描いている点です。自分の表現は、自分のためだけじゃない、どこかで誰かに影響を与えるかもしれない。そして、そんな2人が出会い、互いに共鳴しあうことで背中を押されていく。そんな双方向の影響を描いている点が重要です。
■誰もがクリエイターになれる時代を反映?
テレビアニメでも、クリエイターを描く2つのオリジナル作品『ガールズバンドクライ(ガルクラ)』と『夜のクラゲは泳げない(ヨルクラ)』が、この春話題となりました。
どちらも音楽を中心に、若い女の子たちの葛藤と表現する理由を丁寧に描く作品で、『ガルクラ』は川崎を舞台に猪突猛進な主人公・仁菜と、メジャー進出したバンドを抜けて音楽を辞めようとしていた桃香を中心に、音楽をやる理由で悩む様を描く作品でした。『ヨルクラ』も、かつてアイドルグループで不祥事を起こした花音とイラストレーターを目指すまひるが再起する物語です。
これらの作品も、クリエイターたちが出会い、互いに刺激しあう物語を中心に据えている点で、『ルックバック』や『数分間のエールを』にも通じる部分があります。
現代は、SNSや動画投稿サイトの発展で、作品を発表するだけなら誰でもできる時代。ある意味、誰でもクリエイターになれる時代になったと言えます。クリエイターという存在がより身近になったと同時に、だからこそ競争も激しくなっています。そんな現代にクリエイターをやる意味や理由、現実の壁などにぶつかる物語は、多くの人の共感を集めやすいのかもしれません。
ここで紹介した作品群が相次いで同時期に登場したのは、そんな時代を背景にしているのも関係があるのでしょう。
【ほかの画像を見る】『ルックバック』メインビジュアル(C)藤本タツキ/集英社(C)2024「ルックバック」製作委員会
(出典 news.nicovideo.jp)
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